恵比寿の五差路で道に迷う

あの五差路には人を惑わす魔物が棲んでいるに違いない

加害者が放つ「気にしないで」という暴言

「あなたの言葉に私は不快な思いをした」
と伝えた場合、
「気にしないで」と言葉を返す人間がいる。

この言葉を放つ相手は
ご自身が相手を傷つけている事に対し
大概無頓着だ。

愚鈍とはこういう時に使う言葉であると
しみじみ思う。


もしも相手を思いやっているつもりで
この言葉をかけているのなら
それは随分と尊大な態度だ。
まるで中世の王や女王の様な振る舞いである。

それだけご自身が
偉大だとでも言いたいのだろうか?


そもそも
ご自身が相手を傷つけておきながら
気にするなとはどういう了見であろう。

無意識下であっても
意識上であっても
相手を格下だと思っていなければ
まず出てこない言葉である。


そしてご自身の加害責任性を
うやむやにしようとする言葉でもある。
ご自身が行った加害行動を
無かった事にしろと言っているのと同義だからだ。

言動の背景に存在する
この様な不誠実さは
個人的に強い不愉快さと怒りを覚えてしまう。




放った言葉は
二度と取り消す事が出来ない。
決して、無かった事には出来ない。

聞いてしまった人の心は
少なからずその影響を受ける。
聞く前の心とは必ず違う状態になる。

耳に飛び込んできた言葉に対し
聞いた側の感受性が
ほんのわずかでも反応すれば
それに付随する知覚を拡げてしまうからだ。

だからこそ元の状態になど
絶対に二度と戻らない。
なるわけが無い。


ご自身が傷つけた相手に対し
もしも良い状態になる事を
本当に望むのならば
適切なのは回復を願う文脈なのである。